心電図異常と病気
異常所見から分かること
"心電図所見"だけでは、診断ができない病気も多いです。
必ず精密検査を受けましょう。
「異常所見」といっても、健康な人でも見られる所見もたくさんあります。
異常所見を指摘された場合は、治療が必要かどうか、命にかかわるような重大な病気が隠れていないかを確認するために、精密検査を受けてください。
心電図の異常所見とは「正常波形」に当てはまらない波形のことです。
心電図には「正常波形」とされている波形があり、それに当てはまらなければ「異常波形」と判定されます。異常波形といっても健康な人でも見られる所見もたくさんあります。異常波形が心臓の病気を確定するものではありません。
聴診器のみの診察では限界があるように、心電図検査のみでは心臓の状態や病気のことが全て分かるわけではありません。そのため、精密検査を受けることが大切です。
以下では、比較的よくみられる異常波形についてご説明します。
R波増高不良
心筋梗塞や肺気腫、心筋症などで見られます。
ただし、痩せ型の体型の方にもよく現れます。
異常Q波
心筋梗塞や心筋症など強い心筋障害によって見られます。
Ⅰ度房室ブロック
房室ブロックは心房から心室への刺激伝導に障害がある状態です。
I度房室ブロックは、何らかの原因で心房一心室間の電気の流れに時間がかかっているが心室へ刺激は伝わっている状態です。
ブロックの程度が悪化しなければ問題ありません。しかし新しく生じた場合や極端な伝導時間の延長そして自覚症状がある場合などには注意が必要です。
Ⅱ度房室ブロック
心房からの刺激が心室へ伝わったり伝わらなかったりする状態です。心房心室伝導時間が徐々に延長し心室への刺激がなくなるウェンケバッハ型はあまり問題ありませんが、症状がある場合には精密検査が必要です。突然心室への伝導がなくなり心室の収縮が止まるモビッツⅡ型は心臓の病気を合併することが多く十分な精密検査が必要です。
陰性T
心筋梗塞、高血圧や心筋症による心肥大、脳内出血などで見られます。
右房性P波
肺高血圧症や肺気腫、心房中隔欠損などで見られます。
ST上昇
心筋梗塞、心筋炎、ブルガダ症候群などで見られます。
健常者にも現れることがあります。
ST-T低下
心臓の筋肉の血液の流れが悪い場合(心筋虚血)や、心臓の筋肉が厚くなった状態(心肥大)などで見られます。
健常者にも現れることがあります。
QT間隔延長
危険な不整脈が起こりやすい状態です。
早急に医療機関を受診し十分な精密検査を受けてください。
完全右脚ブロック
心臓の右側の電気の流れがブロックされた状態です。
基礎疾患のない右脚ブロックは問題のないことが多く、電気の流れは左側を通って伝わりますので右心の収縮には影響はありませんが、定期的に心電図検査を受けるようにしましょう。
完全左脚ブロック
心臓の左側の電気の流れがブロックされた状態です。
広範な心筋障害を有している場合があるため、早急に医療機関を受診し十分な精密検査を受けてください。
完全房室ブロック
心房-心室間の電気の流れが完全に途絶えている状態です。心房と心室が独立して電気刺激が発生しています。まれに無症状の場合もありますが、失神や突然死の原因となり非常に危険な状態です。
早急に医療機関を受診し十分な精密検査を受けてください。
軸偏位
心臓の筋肉が働く時に流れる電流の方向のことを平均電気軸といいます。
この軸が通常よりも右側(時計回転方向)に傾いていることを右軸偏位、左側(反時計回転方向)に傾いていることを左軸偏位といいますが、病気ではなく、特に問題ありません。
上室性期外収縮
洞結節より早く別の場所で心臓の拍動が指令される場合を期外収縮といい、心房や房室接合部(上室)で発生した場合、上室性期外収縮となります。
緊張、興奮、ストレスなどで起こることもあります。
心室性期外収縮
本来、心臓の収縮が指令されない心室から、通常のリズムよりも早く発生した状態をいいます。
健康な人では興奮、喫煙、過労などでみられます。
心臓疾患の方でみられた場合、危険な不整脈に移行する可能性を検査する必要があります。
高いT波
高カリウム血症(腎不全など)や心筋梗塞の発症直後、僧帽弁狭窄症などで見られます。
健常者にも現れることがあります。
平低T波
心筋梗塞や左室肥大ではST部分の異常を伴ってみられます。
健常者にも現れることがあります。
WPW症候群
心房-心室間の電気が伝わる正常なルート以外に副伝導ルート(ケント束)が存在するため心房心室伝導時間が短縮します。
異常な伝導による頻拍発作がなく自覚症状もなくとも、一度は医療機関を受診してください。
低電位
心筋梗塞などで心臓の収縮力が弱った時や体内の水分貯留や肺気腫など肺に含まれる空気が増加した時、肥満などでみられます。
洞徐脈
心電図波形は正常ですが、心拍数が少ないものをいいます。
心臓に拍動を指令する部位(洞結節)の異常や甲状腺機能低下症などで見られます。
健常者でも特にスポーツをよく行っている人に見られます。
洞性不整脈
心臓の拍動のリズムは正常ですが、興奮の間隔が不整となる状態をいいます。
健康な人でもよく見られ、吸気時に心拍数が増加し、呼気時に心拍数が減少する呼吸性不整脈の一種です。
洞頻脈
心電図波形は正常ですが、心拍数が1分間に101回以上のものをいいます。
発熱、心不全、甲状腺機能亢進症などのほかに、健康な人でも不安・興奮・緊張などのストレス、アルコール摂取や運動で起こしやすくなります。